『バビロン』4話「追跡」感想です。
前回あらすじ
新域は新法の試験的運用を行う特別行政区の役割を与えられた「国家の実験場」だった。その新域構想を達成するために、若くてカリスマのある齋開化を新域長へと当選させる不正選挙が秘密裏に進行していた。正崎は苦渋の決断で、野丸の捜査からは手を引き、文緒と因幡の一連の事件の調査を進めることに。ところが某日、齋が失踪。その翌日に、タワー屋上に64人の男女が整列している様子が注目を集める中、齋が安楽死が自由に許される世界の実現を宣言。屋上の男女は満面の笑みでタワーから飛び降りた。その異様な光景を眺める群衆の中には曲世愛の姿もあった。
4話あらすじ
齋開化の死の解放宣言から24時間後、国内では平時の4倍の237人が自殺していた。この齋の宣言は新域構想に協力していた検察や野丸も知らないもので、法的機関は対応を迫られる。
法務事務次官の瀬黒嘉文と東京地検部長の守永、正崎は対応を協議する。自殺を認めること自体は罪にならないことから、64人に対する自殺教唆罪の適用を念頭に、警察と一体となって捜査し、齋の身柄を確保しようという方針に決まった。
検察事務官の瀬黒陽麻を立ち合い事務官に迎え、捜査一課管理官の寅尾太隈とともに総力をあげて捜査に当たるも、自殺教唆に抵触するようなメールや痕跡は遺されていなかった。
また正崎は性犯罪に関する捜査班である第六強行班の筒井にも協力を頼み、曲世愛の素性や過去を調査。一連の事件には彼女の関与が濃厚であると踏んでいるようだった。
そして齋から新たなメッセージがインターネットにアップロードされる。そこには12日後の10月20日の新域域議選挙で自殺法の民意を問うというものだった。
自殺法に対するバビロン世界の反応
齋開化の宣言した自殺法の是非に関する世論調査では『バビロン』の世界では支持するが3.4%だったという。現実の日本だとどうなるだろうか。固定電話などに電話を掛けて回答を得る旧来の方法であれば、支持率はかなり低く出ると思うが、ネットのアンケートであれば、さらに高い支持率になるだろうと想像する。現在の日本では自己責任論が蔓延しているので、自殺するのも最終的には自己責任だと受け入れられてしまうような気もする。
バビロンの世界では齋の宣言後の自殺数が4倍になったというが、これは齋の手法が上手い。64人が一斉にビルから飛び降りるというセンセーショナルな映像を見せられた上に、他のみんなもやってるから自分もやってもいいんだという意識が生まれる。日本人は他人と違うことを嫌う傾向があるので、自殺者数が増加していくと、さらに加速度的に増加していくのではないか。
新域域議選挙について
齋は新域域議選挙で民意を問うと主張。その域議選挙は3つの規定から成っている。
1. 日本国内で、新域内に住所を有する住民は、域議会議員を選挙する資格(選挙権)を有する
2. 選挙権を有する者は、域議会議員に立候補する資格(被選挙権)を有する
3. 全ての立候補者は、自殺法に対する所信を明確にする
1の問題点としては、年齢制限がないため赤ちゃんでも投票することができる。親が代理で投票する可能性もある。しかし親であれば、尚更自殺法には反対票を投じる可能性が高いように思う。また、居住実態の有無に関してだが、日本でも某党は支持者の選挙前移住を行なっているという噂がある。域議選に関しては、新域ができて間もないということもあり、居住実態を問わないのはそこまで不自然でもない。
2の問題点は、1と同様に赤ちゃんや前科者でも立候補できるということだろう。面白おかしく立候補する人が出てきてカオスな選挙戦になると思われる。しかし自殺法賛成者はどう考えてもキワモノが多いと思うので別にこれが齋の有利になるとは思えない。
3は過去にも日本で争点を一つだけに絞って選挙を行うというやり方があった。直近で有名なのは小泉純一郎元総理の郵政選挙だろうか。郵政民営化に反対か賛成かを表明させて、反対議員を自民党は公認しなかった。結果はご存知の通り、自民党の圧勝で、郵政民営化自体の是非よりも、小泉元総理のカリスマ性が評価された結果だったと思う。同じくカリスマ性のある齋と構造はよく似ている。しかし、前述の通り、自殺法に賛成するのは3.4%であり、現状は齋が圧倒的不利だろう。
全ての条件において、齋が特別有利になるとも思えない。ではなぜ齋はこのような条件を提示したのか。そしてどうやって勝利を収めようと考えているのか予想もできない。アクロバットで美しい解決を期待したい。
瀬黒陽麻ちゃんがかわいい
堅苦しいことばっかり書いたので最後はしょうもないことを。瀬黒陽麻ちゃんがかわいい。ただ姿形を自由に変えられる曲世愛のせいで、実は彼女も曲世愛じゃないのかという気がしてたまらない。杞憂だったらいいのだが。
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