『デカダンス』12話(最終回)感想 全体を通しての感想

3.5

『デカダンス』第12話(最終回)「Decadence」感想です。

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前回あらすじ

ミナトはデカダンスでオメガに対抗するも、逆に反撃を食らい、継戦不可能に陥る。シャトルからのソリッド砲も無力化され、システムは最終手段として空間圧縮装置装置を起動させてオメガとデカダンスをともに消滅させる計画を開始する。カブラギはデカダンスを素体としてログインすることを決断。デカダンスコアに潜入したカブラギの前にミナトが現れる。カブラギの想いに根負けしたミナトは、コアへのログインを手伝うのだった。

12話あらすじ

カブラギがデカダンスにログインしたが、デカダンスはシステムの抵抗に遭い、起動できなかった。カブラギはコア内でムニンと邂逅する。ムニンはいくらカブラギがシステムに抗おうとも、そのカブラギの行動すらシステムの一部であり、抵抗することに意味はないと説いた。それでもカブラギは未来は自分で選択すると明言し、ムニンを退ける。

デカダンスが起動。さらにタンカーやギアの協力もあり、過去のデカダンスの遺跡からパーツをかき集め、デカダンスのパンチをドリルに改装。

しかし、オメガが再び攻撃準備に入る。そこにログインしていたドナテロが特攻。照準をデカダンスから外した。

デカダンスキャノンをオメガに放つ。ところが、パワーが足りずオメガを倒すまでには至らなかった。カブラギはリミッターを解除。オメガを撃破するも、カブラギはデカダンスの瓦礫に押し潰され、破壊された。

3年後。デカダンスは新たにタンカーとサイボーグが共に楽しめるアミューズメントパークとして再建された。カブラギはデカダンス前にジルによって取られたバックアップデータにより、ナツメと再会するのだった。

どうやってデカダンスを再建したか

最終回。意外性のある結末ではなかったけど、まとまっていたと思う。デカダンスが再建されて、サイボーグがタンカーと一緒に農業に勤しんだり、レクリエーションを楽しんだりする平和的な施設には生まれ変わり、ガドルからの恐怖からは解放された。最後にタンカーとサイボーグが一緒の絵に収まっているシーンはとても印象に残った。しかし、デカダンス再建するまで、どのような行程を辿ったのかが全く分からず、唐突な印象は拭えなかった。

ガドル討伐がなくなって不満を漏らすサイボーグも少なからずいただろうし、サイボーグをタンカーがどのようにして受け入れたかも気になるし、今までの事実を知らされて(知らされてないかもしれないが)タンカーがどのように反応したかも興味深い。そこをばっさり行ったのは残念だし、もったいない。なんならカブラギがシステムに抗う物語よりも面白く、そっちをメインにしてもいいんじゃないかとすら思う。

バグもシステムの一部

ムニンが「バグもそれを消去することも、カブラギの反抗ですらもシステムの一部」という発言があった。これは詭弁でしかないと思う。結局流れが変えられないなら、カブラギがやってる行いすらも止める必要がないし、『デカダンス』の世界は単に監視だけされている世界ということになり、現実世界とも大きく変わりがない。『デカダンス』はフィクションだけど、現実も同じやぞっていう風刺なのかもしれないけど、あまり効果的には思えなかった。

ただ、前回の感想で「カブラギのやってることはシステムと大差ない」みたいなことは書いたけど、それと似たようなことを言ってるのかなとは感じた。そこに言及しておくことで、カブラギの行為の矛盾を除去したのかもしれない。

でもどうせやるなら、カブラギは頑張ったけど、結局流れは変えられないんやっていうタイムトラベルで過去を変化させたとしても、結局同じ未来に収束するという『時の門』や『シュタインズゲート』のような展開にして、バッドエンドにする方法もあったんじゃないかと思う。ただ最近はバッドエンドの人気がないので、こういう結末は選ばなさそう。カブラギの復活もバックアップしたらそれでいいんかってのがちょっともやっとしたけど、ハッピーエンドにしたかったんだろう。

ドナテロが特攻するシーンは『機動戦士ガンダム』のスレッガーが特攻するシーン。ナツメやクレナイがデカダンスのパーツを押すシーンは『逆襲のシャア』のオマージュなのかな。妙に最終話はガンダムっぽいシーンが多かった気がする。

全体を通しての感想

何はともあれまず2話の衝撃度が大きかった。このブログも2話のPVが一番多かったし、Twitterなどでも話題になっていたようだ。ただ、そこで今後の展開に大きな期待をしてハードルが上がりまくったせいか、後半はやや低調になった印象はあった。今までのアニメにはない全く新しい物語を期待していたが、結果的にディストピアをぶっ壊すぜというような、よくある物語になってしまったのが残念。最終話にもどんでん返しはなかった。

やっぱり構成的には、最後の最後でデカダンスはゲームでしたとネタバラシする方が良かったと思うけど、これは以前の感想でも書いたけど、テレビアニメは途中で視聴者が脱落してしまうので、序盤の引きを強くするために最初にネタバラシを入れざるを得なかったのだろう。そのおかげで注目度は急上昇したが、竜頭蛇尾感が出てしまったのは難しいところ。

作画は安定して綺麗で、空中戦闘も爽快感があった。サイボーグを単純な構造にすることで、タンカーとサイボーグの相入れなさを出すと同時に、作画の節約もしていたのが上手い工夫だった。ナツメなどキャラクターも表情が豊かで魅力的だったけど、そのナツメの出番がやはり後半は減っていき、カブラギの心の中にさえいれば十分な状態になってしまっていたのは改善して欲しかったな。リンメイも可愛いなと思っていたけど、ほとんど出番がなかったのも個人的に寂しい。

尺が足りなかったという意見も聞くが、『星合の空』のように急に1クールに変更されたというわけではないのだから、エクスキューズにはならない。序盤はナツメの成長物語、中盤はそれを受けてのカブラギの心情変化、後半はシステムの破壊と、個の物語から世界全体の物語に12話で飛躍したがために描ききれない部分が出てきたのだと思う。制作陣が何を描きたかったのか真意は私には分からないけど、描きたい部分以外を捨てて、描きたいところを深く掘り下げるという取捨選択があれば、1クールでも完璧に完結できたのではないか。

まあ色々言ったけど、それは最初の期待感が強すぎたためというのが最たる原因で、ハードルを上げすぎなければ普通に楽しめる良作のアニメだったと思う。

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