『映像研には手を出すな!』第12話(最終回)「芝浜UFO大戦!」感想です。
前回あらすじ
町おこしアニメのストーリーも行き詰まってしまう。顧問の藤本の創作には遊びも大事という助言に従い、映像研は街の探検に出掛けることに。翌日、映像研の部室の入口には学外との金銭授受禁止と書かれた張り紙が貼ってあった。しかし、ビジネスがネットで取り上げられ、世論の味方が得られたため、問題は解決。みどりはアニメのテーマを共生とした。それはみどりとさやかの関係性に通じるものであった。その後、制作は順調だったが、注文した楽曲が全くイメージと違うという問題が発生してしまうのだった。
12話あらすじ
ダンスのシーンと全く合わない楽曲が納品され、映像研は対策を検討する。みどりは敵対する種族が和平を結びダンスを踊るという結末ではなく別の結末に変更するという決断をする。
制作は徹夜になったが、コメットAにギリギリ間に合った。そのまま会場に向かい販売開始。午前中は水崎ツバメ効果もあり、ファンがたくさん押し寄せた。
午後は、ツバメの顔をわざと隠してアニメの内容に期待感を持たせる作戦を決行。SNSでも話題となり、更に売れ行きは加速していき、ついに完売となった。みどりはずっと夢見心地の気分だった。
コメットA終了後、みどりの家で改めて「芝浜UFO大戦!」を観賞することになった。最後のダンスシーンは、お互いの種族が捕虜となるシーンに変更されていた。
「芝浜UFO大戦!」について
町おこしアニメ「芝浜UFO大戦!」が公開された。『映像研には手を出すな!』のアニメにおいても集大成となる作中作アニメなのだが、率直に言って、その出来は首を傾げるものだった。
まずストーリーが全く分からない。アニメの視聴者は作中作のストーリーの流れをある程度知っているから、なんとなく話が予想できるが、初見でこれを見た劇中の円盤購入者は全く理解できないと思う。特に途中の建物が地中から出てきたり、それが巻き戻ったりするようなシーンは、重要なシーンがバッサリ抜け落ちているようにしか見えなかった。
またアニメの手法としてもどうかと思うようなところがいくつもあった。例えば多くのシーンで左右に画面が分かれていたり、アニメに矢印が出てくるのは稚拙すぎると思う。アニメというよりもプレゼンテーションになっていると感じた。かといってストーリーが分かりやすいというわけでもない。
浅草氏と水崎氏が描きたいシーン(もしかしたらそれですらなく制作陣が描きたいシーンにすぎないかもしれないが)を単につなぎ合わせただけの作品にしか見えなかった。これはあくまで高校生が作ったものだからわざと稚拙にしているというわけではないと思う。やっぱり映像研に脚本家がいなかったのがダメだったのだろうか。「そのマチェットを強く握れ!」などの作品の方が明らかに出来は良かった。
あと声優オーディションをしたのに声が一切入ってなかったのはどういうことなのだろうか。せめてナレーションでもあれば、もう少し(円盤購入者にとって)親切な作品になっただろうに。
全体を通しての感想
アニメ制作の舞台裏や制作におけるテクニックや裏技などを知ることができたのは良かったと思う。実際に動いている絵を見ながら、説明されることはほとんどないので貴重な作品ではある。また途中怪しいところもあったが、作画は全体的に良かったし、動かしやすいデフォルメキャラとは言えども、よく動いていた。
また、3人の友情というか関係性はすごく伝わってきた。これを見てアニメ制作に憧れる若い人が増えるかもしれないなとは思った。実際に青春時代に何かに打ち込むのは将来いい経験になると思うので、色んなことに挑戦して欲しいと思う。
良くない点もいくつかある。まずはストーリーで、基本的にアニメ制作におけるテクニック論や、制作陣や原作者のアイデア披露にばかり尺が割かれていて、ストーリーに波がほとんどなく、無味乾燥としたものになっていた。
あとは作品に作者の思想がかなり滲み出ているのがどうも気になる。作者の思想が出てない作品なんて存在しないのだが、原作者がTwitterで色々呟くせいもあって、過剰に付加されてしまっていると思う。例えばキャラクターが全員女性なのは、性別が記号化することで根付いてる表現文化を変えるためとか言われると、全然気にしてなかったのに、本当にそうか?と思って見てしまう。
私から言わせれば、水崎氏なんかは特に記号化した女性そのものだと思うし、それがアニメーターであるというのが一種の萌えポイントになってしまっているので、女子高生におっさん趣味の何かをやらせる日常系アニメと何も違いがないようにしか見えない。12話と11話でもあった金森氏のビジネス論も、全然的を射ていない気がして、もやっとする。
あとは、アニメを愛する人に向けてのアニメなのに、吹き出しや矢印などの演出がめちゃくちゃ漫画的で、更にほとんど原作漫画とカットが同じなのも好きじゃない。なぜアニメならではの表現方法を積極的に使わないのかと思う。アニメは素晴らしいと伝えたいはずのアニメなのに、制作者がアニメの力を全然信じていない。
アニメの表面だけ見れば悪くないアニメだと思うのだが、作品全体に通底する哲学が私と相容れないなと思った。決してつまらないアニメではないが、申し訳ないけど、特に後半部にかけては、私が好きになれないアニメだった。まあ私はクリエイター気質じゃないし、そもそもこのアニメにはお呼びではなかったのだと思う。クリエイターを目指す人にはきっとオススメのアニメだと思います。
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