『星合の空』第8話感想です。
前回あらすじ
眞紀は王子が須永の関係性を読み取り、須永が萎縮してコンビネーションが取れなくなるようなプレーをし続け、ゲームを支配していく。ファイナルゲームへと突入。シーソーゲームを繰り返すが、最後は仲間を信じる大切さを改めて理解した王子が制した。試合後の日曜日、顧問の桜井は息抜きも重要と、バーベキューにメンバーを誘う。バーベキューには偶然通りがかった王子も何故か参加することになり、楽しいひとときを過ごす。しかし、柊真は騒ぐ部員たちの輪の中に入れずにいた。
8話あらすじ
直央の母親は何かあれば難癖を付けてくるモンスターペアレントだった。母親はバーベキューと知っていながら、日曜日に部活に駆り出されたと託けて、学校に苦情を入れた。
校長は面倒を避けるためにソフトテニス部に一週間の活動自粛を言い渡す。自粛期間中、大会の初戦の相手で、注目選手でもある旗ノ岡中学校の日下部ジョイの偵察に行くことに。
しかし、旗ノ岡中学は生垣に囲まれていて、外からは偵察できない。そこでジョイの追っかけの女子に変装するという作戦を決行する。悠汰はXジェンダーでメイクもできたので、悠汰と眞紀が女装をすることに決まった。
偵察時には、夏南子が率先して囮になってくれたおかげで、ジョイのプレーの様子をビデオに収めることができた。夏南子は絵を描くのが好きだったが、両親に反対されているのを悩んでいた。彼女は悩みを美術教師でもある桜井先生に打ち明ける。
自粛が明け、ソフトテニス部員は女子部員との強化試合を希望。桜井や樹の姉の菜美恵の働きもあって、強化試合が組まれることになった。しかし、悠汰の性的指向が母親にバレてしまう。
教材ビデオのようなLGBTの説明
悠汰が自身がXジェンダーであると眞紀に打ち明けるシーンはかなり長い尺を取っていた。悠汰の悩みは、最近話題になることも多いので、実際に悩んでいる人も多く、当然題材になるべきとは思う。
しかし、そのシーンがあまりにも説明口調すぎて、まるで教材ビデオを見させられている気になった。視聴者にLGBTは普通のことなんですよと、延々と言葉で語られてもアニメとしてはなんの面白味もない。言いたいことがあるのなら、それをストーリーや演出で語るのが、アニメであり作品だと思う。
LGBTは性的マイノリティーとは言っても、作中にもあったように11人に1人がそうであり、マイノリティーの中ではマジョリティーに属する。したがって、LGBTに対する不勉強や理解不足は炎上しやすい。政治家や著名人で不用意に発言して、大炎上した人は何人も思い浮かぶだろう。
この教材ビデオのような説明口調も、中途半端に描いて炎上するのを避けたのではないかと思う。だけどアニメになっていないものを作るんだったら、そもそも描かない方がいい。思春期の悩みを掻き集めたら、必ず入ってくるものではあるので、描く必要があったのだろうが、ちゃんとこの作品に馴染むように描いて欲しい。これでは、LGBTの部分だけ全体からかなり浮いてしまっている。
人種差別はないのか?
それで、LGBTに触れるのだったら、作品中に人種差別に悩む中学生はいないのかと思う。今回ジョイというミックスが登場したが、黒人とのミックス、もしくは在日韓国人をメンバーに入れるべきだったのではないかと思う。
前者は欧米ではかなりセンシティブだし、後者はアニオタは反韓思想の人が多いために、描くのがかなり難しいと思うが、そこに挑戦しなければ思春期の悩みを描き切ったとは言えないだろう。
結局『星合の空』は悩みの種類が多すぎて、書き切れていないのが大きな問題なんだと思う。LGBTだけでも1クールを使えるのに、それ以外にも親の虐待や暴力、モンスターペアレントにネグレクトなど、多岐に渡りすぎてとっ散らかっている。悩みをコレクションし始めると、じゃあ、これは言及しないのか?みたいなものも出てきて、無駄に粗が目立つ。
御杖さんがかわいい
その全体的に中途半端な描き方の中で、御杖さんの悩みだけは、かなりしっかりと描かれている。絵が描きたいのに親に無駄だと言われていて、それが悩みだったけど、無駄なソフトテニスに打ち込む姿を見て、自分も変わりたいと思った、とちゃんとストーリーに従って彼女の成長が分かるようになっている。
彼女が今まで何事に対しても切って捨てていたのも、絵を諦めるための一種の防衛反応だったのかもしれない。さらに眞紀に対する淡いような恋愛感情まで見えてきて、登場人物の中で最も青春している。もしかしたら『星合の空』の本当の主人公は御杖さんなのかもしれない。峯田茉優さんの演技も大好き。
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