『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』1話2話感想 舞城王太郎らしいカオスなミステリー

3.5

『ID:INVADED(イド:インヴェイデッド)』第1話、第2話「JIGSAWED バラバラの世界」感想です。

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1話あらすじ

酒井戸が目覚めると、自身の身体がバラバラになっていた。そして周囲の世界もバラバラになっていた。バラバラの世界で、酒井戸はナイフが突き刺さったかえるちゃんを発見。彼は名探偵であり、犯人を捜すという使命を思い出す。

そこは犯人の殺人衝動の世界・イドであった。犯人の思念粒子から構成された世界で、犯人の無意識によって構築されているという。酒井戸の使命は、猟奇的な連続殺人犯のアナーキーを特定することだった。

酒井戸はイドで、現実世界の被害者達に出逢う。彼らも身体がバラバラになっていた。酒井戸はこの世界では、あるものよりもないものに意味があると考え、バラバラの世界を再構築し始める。すると「たこや」という言葉が浮かび上がった。

捜査班の外務部の松岡黒龍と本堂町小春は、フォントが一致した「たこやきハウス つぼたこ」を訪ね、その文字の角度のズレから犯人の居場所を特定する。

松岡が現場に乗り込むと、ドリルを手に持った男がいた。警官は彼を確保するが、実は真の犯人は被害者と入れ替わっていた。アナーキーは本堂町を撥ね、彼女を拉致する。

イドの世界では、かえるちゃんだけがバラバラにされていないことに酒井戸が気付く。かえるちゃんと合体するように、バラバラになったアナーキーが隠れていたのだった。

2話あらすじ

事件に巻き込まれた本堂町はイドの世界にも出現。さらにジョン・ウォーカーなる無意識に働きかけて犯罪を起こさせるとされる人物まで出現した。出現したジョン・ウォーカーは抜け殻のようで、酒井戸が退治したが、アナーキーは逃亡してしまう。現実のアナーキーは本堂町を拘束して、殺気を感じとるワクムスビの仕組みを尋ねる。本堂町は、差し向けられたドリルに自ら突っ込み、殺気を増幅させ、自分を犠牲にして松岡に居場所を伝えた。

酒井戸はイドの世界から脱出させられ、次は本堂町のイドへと降り立つ。そこには首を吊ったかえるちゃんがいたが、約1分後、巨大なドリルに2人もろとも押し潰される。

自らドリルに突っ込んだ本堂町を見て、アナーキーは自分の求めていたものを知り、抵抗することなく逮捕される。本堂町は無事一命をとりとめた。

現実世界に戻った酒井戸は百鬼船太郎に労われる。酒井戸は囚人であって、かえるちゃんは彼の娘?であった。

舞城王太郎らしいカオスなミステリー

舞城王太郎はメフィスト賞作家で、代表作に『世界は密室でできている』や『ディスコ探偵水曜日』などがあるミステリー作家なのだが、作風は謎解きを主体としたミステリーというよりも、カオスな世界観をこれでもかとつぎ込んだ非現実的小説である。私は、前者は大好きな小説なのだが、後者は異常なまでの衒学趣味とカオスなストーリーに面白さがよく分からなかった。したがって舞城王太郎自身は好きな作家というわけでも嫌いな作家というわけでもない。

『ID:INVADED』も舞城王太郎らしい不思議な世界観を味わえるアニメである。基本的に全ての言葉やシーンに意味を見出すことはあまり意味がなく、その世界に没入するのが正しい見方だと思う。

一応の設定としては、犯人の思念粒子から構成された殺人衝動の無意識世界で、名探偵が犯人のヒントを得つつ、現実の警察が犯人を確保するというミステリーなのだが、謎解き自体はほとんど存在しない。まあ今回は、かえるちゃんだけが欠損がないというのに途中で気付いたので、イドにおける犯人の居場所自体は推理できたが、だからどうだという感じだ。ちなみに、これと似たようなトリックは有名な作例がある。作品の名前は出せないが。

結局、犯人を見つけられたのは街を再構成したら出てきた「たこや」の文字からだったので謎解きもクソもない。これはミステリー的に不備があるわけではなく、あくまでそういう作品なのだ。

ただ、このアニメは売れないだろうなあと思う。あまりにも分かりにくいので、最初の10分で脱落した人がかなり多かったのではないか。また他のアニメとも時間帯が被っているし、そもそも見た人も少ないかもしれない。世界観にとことん没入できる人はめちゃくちゃハマるとは思うが、万人受けはしなさそう。

あと主人公の声が津田健次郎は全く合っていないと思う。いい加減に刑事とか探偵役の津田健次郎はやめてほしい。『コップクラフト』とか『トクナナ』とか『PSYCHO-PASS』とか毎回出てくるから、もう飽きてしまった。演技や声もどのアニメでも一緒だし。

軽く用語の元ネタ

まずイドに関しては井戸と異土、そしてフロイトの本能を司る領域を意味するイドのトリプルミーニングであるとされる。井戸型をした別世界(異土)で無意識の本能(イド)に触れるというダジャレみたいなもんだろう。

そのイドにはミズハノメを使って入るとされ、現実における殺意はワクムスビを使って検知される。ミズハノメとワクムスビもイザナミの尿から生まれたとされる神様の名前である。

作品情報

イントロダクション

殺意を感知するシステム「ミヅハノメ」を用いて、犯罪事件を捜査する組織、通称「蔵」。そして、「ミヅハノメ」のパイロットとして犯人の深層心理「殺意の世界(イド)」に入り、事件を推理する名探偵・酒井戸。頻発する凶悪かつ謎多き事件と、そこに見え隠れする連続殺人鬼メイカー「ジョンウォーカー」の影を追っていく。

スタッフ・キャスト

スタッフ

監督:あおきえい / シリーズ構成・脚本:舞城王太郎 / キャラクター原案:小玉有起 / キャラクターデザイン/総作画監督:碇谷敦 / 美術デザイン:曽野由大 / 美術監督:三宅昌和 / 色彩設計:千葉絵美 / 色彩設計補佐:小宮ひかり / グラフィックワークス:大竹俊介(Smith) / メインアニメーター:又賀大介 / アニメーター:清水慶太、浅利歩惟、豆塚あす香、井川典恵、河合桃子、松原豊 / 撮影監督:久野利和 / 撮影監督補佐:高木翼 / CGディレクター:川原祐介 / CGディレクター:福永誠二 / CGディレクター:三田邦彦 / 編集:右山章太 / オンライン編集:柴田香澄 / 副監督:久保田雄大 / 音響監督:小泉紀介 / 音響効果:勝俣まさとし / 音楽:U/S / アニメーション制作:NAZ / 原作:The Detectives United / 製作・著作:ID:INVADED Society

キャスト

酒井戸:津田健次郎 / 百貴:細谷佳正 / 富久田:竹内良太 / 本堂町:M・A・O / 東郷:ブリドカットセーラ恵美 / 早瀬浦:村治学 / 白岳:近藤隆 / 羽二重:岩瀬周平 / 若鹿:榎木淳弥 / 国府:加藤渉 / 西村:落合福嗣 / 松岡:西凜太朗

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