『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』3話感想・解説 イドの世界と現実世界のリンク

3.5

『ID:INVADED(イド:インヴェイデッド)』第3話「SNIPED 滝の世界」感想です。

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前回あらすじ

あらゆるものがバラバラの世界で、名探偵・酒井戸はシリアルキラーのアナーキーを特定する使命を負っていた。そこは犯人の無意識の世界・イドであった。酒井戸はこの世界では、あるものよりもないものに意味があると考え、世界を再構築し始める。酒井戸の推理により、捜査班の外務部の松岡黒龍と本堂町小春は犯人の居場所を特定する。ところが犯人は被害者と入れ替わっていて、逆に本堂町を人質に取られてしまう。だが、本堂町は、差し向けられたドリルに自ら突っ込み、自分を犠牲にしてワクムスビにより松岡に居場所を伝えた。アナーキーは逮捕され、酒井戸は現実世界へと帰還する。一連の事件にはジョンウォーカーなる人の無意識に働きかけて犯罪を犯させる人物の影があった。

3話あらすじ

現実世界では通称「花火師」による連続爆破テロが発生していた。ある事件でようやく犯人の思念粒子の採取に成功し、酒井戸は名探偵として花火師のイドへと潜る。

そこは周りを瀑布に囲まれた塔の頂上の世界だった。頂上には75人の人物が集められていた。するとどこからともなく銃弾が飛んでくる。かえるちゃんが撃たれ、さらに人々が次々と撃たれていく。

ある男は銃弾の恐怖から塔から飛び降りてしまう。その後、ある女性も飛び降りるのだが、男とは違う場所から飛び降りたのにもかかわらず、落ちた地点は男のすぐそばであった。

したがって、酒井戸は塔が回転しているものだと推測する。そのために狙撃者は一人なのに様々な方向から銃弾が飛んでくるのだった。酒井戸は、撃たれないように回転方向にぐるぐる歩いている男を発見。その男こそが犯人であった。

捜査班の松岡は、爆発現場に舞い戻っていた犯人を発見、逮捕する。犯人は爆破の様子を撮影するのではなく、現場をスマホで撮影する野次馬の狂気を撮影していた。ところが、酒井戸は花火師の本質は、惨状が見たいだけであると看破するのだった。

イドと現実世界のリンク

イドの世界では自動人形がスナイパーになっていて、犯人は塔の頂上で逃げ回っていた。自動人形が現実世界では時限爆弾の役割であり、犯人は現場に戻って様子を観察していたことに一致している。

犯人はイドの世界では、逃げ惑う人にわざとランダムに動けと指示しており、これは彼自身が惨劇を好んでいることの証明にもなっている。したがって、酒井戸は花火師に対して、野次馬の狂気を詳らかにしたいというのは嘘だと見破れたのだと思われる。

ただ、その本質を見破られた犯人がなぜ絶望したのかは私にはあまり理解できなかった。生と死に差なんてないということを証明するためという理解でいいのだろうか。酒井戸が彼に対してだけは、なぜそこまで冷酷になれたのかもよく分からなかった。彼の過去に関係があるのだろうか。

塔が回転するギミック

作品名は出さないが、塔が回転したり建物が回転するギミックは本格ミステリに頻出のトリックである。ただそれらの作品は、登場人物は建物の内部にいて回転していることが気付きにくくなっているが、いくら周りが滝に囲まれているからと言って、外にいるのに回転に気付かないということはあるのだろうか。

回転の速さは犯人の動くスピードと同じだから結構速いと考えられる。まあイドの中の世界だから現実とは違うと言われると何も言えないが、風や空気の流れで分かりそうなものだけど。

大量死とミステリ

今回のキーワードに大量死というものがあったが、この大量死というものもミステリでよく語られる概念だ。笠井潔は本格ミステリの隆盛の前には、人間の尊厳が傷つけられるような戦争や災害などの大量死体験があるとしており、ミステリーはその死の特権を回復するものだとしている。

舞城王太郎もミステリー出身の作家であるから、当然このことは頭にあるだろうし、酒井戸が大量の死というキーワードを出し、個人の死と対比させ、最後は花火師が自死していたのもそれを念頭に置いているものと考えられる。

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