『ID:INVADED イド：インヴェイデッド』6話感想・解説 行き先のない列車と子供っぽい恋愛

『ID:INVADED イド：インヴェイデッド』第6話「CIRCLED 円環の世界」感想です。

前回あらすじ

「穴開き」の被害者の数田は本堂町にキスをして、その場を立ち去った。本堂町は彼にとって殺人衝動と恋愛衝動が入れ替わっていると推理する。酒井戸は数田のイドに潜り、蔵は「墓掘り」が数田であると結論づけた。イドには数田の中学の同級生の写真があったため、本堂町は恋愛感情が犯行の背景にあると考え、井波七星に任意で事情聴取を行う。井波の言動の節々に数田への思慕と猟奇性を感じたことから、真犯人は井波であると推理。彼女に好かれるために、数田は犯行を繰り返していたのだった。

6話あらすじ

井波に銃口を向ける本堂町。そこに隠れていた数田が姿を現す。本堂町を庇った松岡が負傷してしまう。しかし、本堂町は井波を人質に、逆に数田を挑発。我を失って飛び込んでくる数田に、本堂町は包丁を突き立てた。

その瞬間、井波の殺人衝動が発現し、思念粒子の採取に成功。酒井戸が井波のイドに戻ると、そこは最後尾が先頭車両と結合したウロボロスのような列車内の世界であった。

車内には高校時代の井波と数田が通路を挟んで座っていた。酒井戸は2人でボックス席に座るように促すが彼らは窓に反射するお互いの姿を眺めるだけで、決して距離を詰めることなく、電車は同じところを廻り続けていた。

井戸端のスタッフはジョンウォーカーの正体について推理を巡らせる。「穴開き」の被害者である数田のイド内にもジョンウォーカーが認められたことから、なんらかの接点があると推理。家捜しをすると盗聴器が発見された。その機器は酒井戸の娘をあやめた「タイマン」の家から発見されたものと同一だった。

松岡は本堂町を名探偵へと推薦する。彼は本堂町が思念粒子の採取に託けて数田を始末したこと、罠が仕掛けられてる可能性を見越して同僚を見捨てたことなどを指摘し、本堂町の元を去っていった。

行き先のない列車と井波の感情

数田に口づけをされ、彼をを始末した本堂町に対して殺人衝動が発生した井波は、やはり数田に対して恋愛感情を持っていたが、それでも手を伸ばす数田に駆け寄ることはしなかった。それに対して本堂町は「プライドか」と問うたが、井波は「子供っぽいだけです」と答えた。

この時点ではセリフの意味がよく分からなかったが、井波の井戸に潜ったときに謎が解けた。井波と数田が高校時代の格好をしていたことから、彼らの恋愛は高校生の頃で止まっていたのだと思う。

そして井波と数田は同じボックス席に腰掛けることもなく、通路を挟んで窓に映るお互いを見つめるのみ。2人が一定の距離感を持って接していたことを示していて、近付くことも触れることもない「幼稚な」恋愛をしていたのだと推測できる。そしてどこに行くでもない廻り続ける列車は、現在もその関係性が保持していることの現れだろう。

彼女の幼稚性は、数田にもらった「プレゼント（連続殺人事件の被害者）」を配信サイトで見せびらすという行動にも現れている。彼女は、井波の母親の列車飛び込みをきっかけにして狂ってしまった。なので、彼女は行くあてもなく、その列車に永遠に乗り続けている。

酒井戸に関しても、娘が事件に巻き込まれた日から、ずっと時間が止まっているように感じてるはずで、行き先のない列車は彼にとっても居心地が良い世界だったのではないか。だからこそ井戸端のメンバーも彼をすぐ排出することはしなかったんだと思う。

作中ではそれぞれのシーンについての意味は全く説明されていない。上記もあくまで私の想像なので、観た人によって色んな解釈が出てくるかもしれない。それがまた楽しく、説明を省いて絵や情景だけで、そのキャラクターの内面を描こうとする試みは意欲的で、視聴者のことを信頼しているのだなと感じた。このアニメはもっとたくさんの人に知ってもらいたい。

ジョンウォーカーの正体について

ずっと私は本堂町がジョンウォーカーなんじゃないかと想像していたのだけど、彼女が名探偵になったことでそれは間違いだったっぽい。しかし、「穴開き」の事件で自分からドリルに突っ込んでいった時点で、かなりやばい子だと思っていたが、ここまでとは。数田に包丁突き立てたとき、何してるんやこの子と思ってしまった。

改めてジョンウォーカーを推理し直すと、内部にいるというのはほとんど間違いがないだろう。井戸端のメンバーあたりも怪しそうだが、局長の早瀬浦もちょっと気になる。また松岡も何気に怪しい。外務担当だから盗聴器などを仕掛ける機会も多そう。ただ彼が本堂町の洞察力を知っているなら、名探偵に推薦するだろうか？とも感じる。