『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』8話感想・考察 酒井戸と穴井戸の名探偵タッグ結成

『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』第8話「DESERTIFIED 砂の世界」感想です。

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前回あらすじ

松岡は鳴瓢(酒井戸)と勝山(対マン)の思念粒子を採取。彼らのイドに本堂町改め、名探偵・聖井戸御代が潜る。鳴瓢のイドは数字が刻まれたパネルの上に雷が落ちてくる世界だった。聖井戸は推理により雷の回避方法を見つけ出し、移動を開始する。そしてイドの中でコクピットを発見。そこは飛鳥井木記という勝山の最後の被害者の名前が刻まれていた。そんな中、早瀬浦局長は井戸端スタッフの百貴船太郎を逮捕。百貴の家からはミズハノメ開発者の白駒二四男の亡骸およびジョンウォーカーの衣装も発見されるのだった。

8話あらすじ

百貴の所持する資料から、飛鳥井は勝山事件からの救出の3ヶ月後に失踪。その際には、関与不明の13人の看護師集団昏睡事件が発生していたことが判明。百貴はその件の捜査資料を全て消去していた。一方、イドの中のイドに潜った聖井戸の救出のために酒井戸と穴井戸がタッグを組み、百貴自宅の居間から検出された思念粒子から生成されたイドへと潜ることになった。

そこは一面が砂漠の世界であった。太陽は南中高度で完全に停止し、時間も止まっていた。かえるちゃんの近くには足跡が延々と続いており、酒井戸と穴井戸、そしてかえるちゃんの腕には腕時計のものが付けられた跡があった。

名探偵ふたりは足跡を追いかける。すると流砂に飲まれた何者かの亡骸を発見。そのそばにはコクピットが砂に埋まっていた。コクピットには同じように飛鳥井木記の名前があり、酒井戸が乗り込むことになった。

取り調べを受けていた百貴は自身のイドに酒井戸と穴井戸が潜っていることを知らされると、急に取り乱して、罠だと訴えた。

名探偵と本格ミステリ

穴井戸が「本格ミステリでは名探偵は不可謬のはずなのに、ふたりもいると片方は必ず間違えていることになり名探偵ではなくなる」というような内容のことをイドに潜る前に言っていた。

それはその通りだし、含蓄のある台詞なのだが、実際は探偵が何人も登場する本格ミステリはたくさん存在する。正義のはずの探偵自身が事件の引き金になっていることについて深く悩んだ者もいるし、複数の名探偵が手分けして事件を解決するミステリーも存在する。

舞城王太郎も例えば『ディスコ探偵水曜日』で多数の名探偵を登場させている。ただし作中では推理に失敗した名探偵から死んでいく。穴井戸のセリフと通ずるところがあり、この台詞は穴井戸に舞城王太郎の名探偵に対する姿勢を語らせたものなのかもしれない。

本当に百貴のイドなのか?

今回気になったのは、酒井戸と穴井戸が潜ったのは本当に百貴のイドだったのかということだ。作中では松岡が居間から思念粒子を発見したと語っただけで、それが本当に百貴の思念粒子かどうかは分からない。百貴も最後に「罠だ」と叫んでいたように、別者が百貴の家でわざと思念粒子を残しておいて、名探偵をイドに閉じ込めようと画策したのかもしれない。

3話で名探偵がイドに閉じ込められることを、松岡はドグマに落ちると語っている。イドの中のイドに潜った酒井戸や聖井戸はドグマに落ちようとしているのかもしれない。

かえるちゃんの存在とドグマ落ち

そして、もう少し踏み込むと現実世界で失踪し、イドの中で必ず観測されるかえるちゃん(つまり飛鳥井木記)は既にドグマに落とされた存在なのかもしれない。そのことを百貴は知っているのではないだろうか。そしてドグマ落ちのことを知っていた外部捜査班の松岡は怪しい。なぜ彼がそんなことを知っていたのかは気になるところだ。

自殺行為も殺人として1カウントになると酒井戸が語っていたことから、飛鳥井木記も自殺未遂を繰り返したということで名探偵の資格はあると思う。そして彼女はイドの中で、酒井戸達にヒントを教える存在であるから名探偵の一人でもあるのではないか。

また今回手首にあった跡は、腕時計ではなく監房の拘束具の跡もしくはコクピットの腕の拘束具だと思われる。その跡がかえるちゃんにも存在したことから、彼女も監房に入れられていたのではと考えられるのも傍証になるかもしれない。ただ、看護師の昏睡事件との繋がりは分からない。飛鳥井を拉致するために眠らせたのだろうか。

その背後には、ミズハノメ開発者や局長の関与もあるように感じる。そうなるとジョンウォーカーはミズハノメ開発者の白駒という可能性もないわけではないが、彼は最初の方から登場していなかったから違う気がする。ただ舞城作品は本格ミステリのお約束を逆にメタ的に利用するアンチミステリーの作家でもあるからなんとも言えないが。

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