『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』第13話(最終回)感想 全体を通しての感想

4.5

『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』第13話(最終回)「CHANNELED II」感想です。

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前回あらすじ

解放された飛鳥井は捜査員を昏睡させ、イド内へと強制転送させていた。そして建物全体がミズハノメと化した。早瀬浦は自傷し、息絶えると同時に自身のイド内へと侵入。彼は飛鳥井と一体化した自分のイドで永遠を手に入れることが目的だった。鳴瓢と本堂町は早瀬浦(裏井戸)を追跡。裏井戸は本堂町のイドで、彼女をドグマ落ちさせようと試みるが、強制転送に巻き込まれた富久田が彼女を救う。しかし、富久田は本堂町を庇い、井波によって射殺される。一方、百貴は飛鳥井を止めるために、巨大ミズハノメと化した建物の中へ足を踏み入れる。

13話あらすじ

酒井戸と聖井戸は、裏井戸と交戦に入る。しかしどんな攻撃もイドの世界では無効化され、裏井戸にダメージを与えることができない。

酒井戸と聖井戸はバラバラの世界に跳ぶ。聖井戸は裏井戸が犯罪の美学に拘っているため、本当は酒井戸に自分が最後の被害者として追い詰められたいのではないかなどと挑発していく。

挑発に気を取られていた裏井戸は自身が座っている椅子がコクピットの一部であることに気付かなかった。酒井戸が投入ボタンを押すことで、裏井戸はイドの中のイドへと転送された。

百貴は何度も意識を失いながらも飛鳥井の元へと辿り着く。彼は銃を捨て、飛鳥井を救出する方法を模索するも、それは叶わず、飛鳥井は銃を拾い顳顬に当て引鉄を引いた。しかし銃に弾は入っていなかった。

自殺も叶わなかった飛鳥井はミズハノメの中に戻っていく。それでも百貴は必ずいつか飛鳥井を救うと約束し、彼女の能力でも鳴瓢がいつか助けに来る未来が見えた。飛鳥井が戻った後は、富久田だけは戻ることはなかったが、捜査員も意識を取り戻していった。蔵の存在や局長の自殺は世間に公表されず、鳴瓢と本堂町は今日も名探偵としてイドに潜り続ける。

いい最終回だった

どういう風に終わらせるのかなと思ったけど、いい最終回だったと思う。早瀬浦局長をイド内のイドに閉じ込めるのについては、私ですら見ていてこれコクピットじゃないか?と気付いたので、いくら余裕ぶっこいてるからと言って自分から座るか?と思ったし、帽子奪われたくらいで挑発に乗りすぎとも思ったが、まあ尺の問題もあるので、仕方ないかな。

イド内のイドでは最初の殺人を犯す前に転送されるということだから、鳴瓢を撃つ前に転送されたということなのだろう。もし局長が過去に自分の手を汚していれば、もっと以前に転送されて再び人生をやり直せることができたはずなのに、手を汚さなかったために逮捕されるというのは皮肉なものだ。

飛鳥井については、変なご都合主義的展開で救出されてハッピーエンドになるよりも、現実的で良かったと思う。個人的には百貴が飛鳥井を撃って終わっても、彼女にとっては救いになるから良いと思っていたが、あくまで警官だから(実際はそれ以上の感情もあるだろうけど)未来に賭けるというのも理解はできる。百貴が命を賭して飛鳥井を生かさせる動機に正義感以上のものがもう少し明示されていても良かったかなとは思う。

飛鳥井自身も救いが少し見える状態で戻れたのだから、早瀬浦に利用されていただけの頃よりはずっと救われているだろう。電気が消えている暗い画面が、鳴瓢が助けに来るシーンで一気に明るくなる演出は強く印象に残った。ただ、富久田は死ぬことで救われたが、それより過酷な飛鳥井に、死が許されないのはやっぱり可哀想だという気はしなくもない。富久田にとっては死は救いでもあり、贖いでもあるため単純には比較できないけれども。

全体を通しての感想

面白かった。いつも最終話の感想では全体を通して良かった点と悪かった点を書いているのだけど、これと言って悪かった点があまり見当たらなかった。

まず何はともあれストーリーが良かった。息をつかせぬような濃密な展開で、30分が短く感じた。第1話を見た時点では、固有名詞や世界観がかなり特殊で、これは結構厳しいかなと思ったが、細かいところまで把握してなくても、面白さを感じられるような演出がなされていて、誰にでも受け入れられるアニメだと思う。この世界観が好きになった人は、何度も見返して考察することで、色んな伏線が見えてきて、更に世界にのめり込んでいける。

一から十までを説明するわけではないところも私好みで、観る人にとって色々な解釈ができるのも楽しい。例えば6話の循環する列車などはその最たるものだろう。語らずとも魅せるというのがアニメには一番大事だと思うし、それが完全な形で達成されていた。東郷と百貴の恋愛の様子がなんとなく想像できるような意味深なセリフをサラッと入れたり、最終話でも、7という数字に拘る局長を(その場にいない富久田すらも)コケにするところなど、細部でもセンスが光っていた。いくら絵が綺麗でも、説明セリフがダラダラと続くアニメは二流だと思う。

またキャラクターも魅力的で、最初はやばいやつだとしか思えなかった富久田などは、最後には愛されキャラになっていたし、本堂町はただのマスコット的なキャラクターかと思いきや、何気に一番のサイコパスっぽいなど、意外性もあった。2019年のM-1グランプリで、ぺこぱが出たとき、最初はなんだこいつら…というアウェーな雰囲気だったのに、漫才終了時にはみんな好きになっていたようなそんな感じだろうか。

個人的には井波七星が好きで、愛に生きる彼女が最後に執念で(本堂町も好きだから可哀想ではあるが)復讐するシーンはカッコ良さすら感じた。彼女も名探偵になっていればきっと活躍できただろうに。まあ自分で手を汚したことがないので名探偵の資格はないと思うが。

明らかに悪いと思う点は、先ほど言った通り無いのだが、あえて言えば真犯人の意外性がなかったことだろうか。舞城王太郎なら、もっと突飛な結末を持ってくるような気がしていたのだが、かなり素直だったなという印象はある。しかし、意外性よりも論理的整合性を重視する人もいるし、サスペンスドラマでも(メタ的推理で)大概最初に怪しい人物が犯人だったりするので、瑕疵と言えるほどのものではない。

また犯人当ての本格ミステリーというわけではないので、この感想を読んだ人は真犯人の名前が分かってしまっているが、真犯人が分かったからと言って面白さが損なわれるアニメではないことは強く言っておきたい。つまり今から観ても楽しめる。注目作ではなかったので、観てない人もたくさんいると思うが、ぜひ食わず嫌いせずに観て欲しい。

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