『啄木鳥探偵處』3話感想 多重解決っぽいテイストの華ノ屋事件の推理編

『啄木鳥探偵處』第3話「さりげない言葉」感想です。

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前回あらすじ

啄木は京助を遊郭へと誘った。華ノ屋というお店で、京助の相手はお滝が務めることになった。ところが、京助はお滝と口論になり、怒って店を出て行ってしまう。その後、喉元を短刀で刺されて息絶えているお滝が発見され、京助が容疑者として疑われてしまう。さらに啄木までもが、京助が犯人だと指摘した。京助は啄木こそが犯人ではないかと反論したが、結局警察に連行されてしまう。そこに現れたのは、野村胡堂、吉井勇、萩原朔太郎であった。彼らは京助の汚名を晴らすべく立ち上がる。

3話あらすじ

まず吉井勇が推理を披露する。その内容は、お滝と京助は相思相愛となって、彼女を女郎屋から連れ出そうと決心するも、一介の教師にそんな大金は払えないことを悟っていたお滝は、他の男とも交わることはできないと、自ら命を絶とうとしたときに猫が現れ、誤って首を刺してしまったという事故死説だった。しかし啄木に京助にはそんな甲斐性はないと一蹴されてしまう。

次に野村胡堂が推理を披露する。親友の啄木と京助がお互いを糾弾し合っていることが推理の端緒となり、詐欺がバレて逆上したお滝を正当防衛しただけだったという啄木京助共犯説だった。ところが、これもお互いを庇い合う関係ではないと反論された。

そこに平井太郎がやってくる。彼は、京助とお滝を巡り合わせようと啄木が画策していたことを盗み見ていた。啄木の後をつけていた太郎は、飲食店に忘れていったローマ字日記を拾い、そこから、釧路の女将の娘が偶然見かけた京助を愛していることを知った。そして、京助を追って上京してきたお滝は、その夢が叶わず自殺したという説だった。

啄木は、それが正しいことを認め、お滝の夢を蔑ろにした京助が許せなかったと告白した。京助は警察を釈放された。ローマ字日記には、お滝の文字で「夢が叶った」と書かれていた。

多重解決っぽい雰囲気

おえんが犯人だと予想していたが、全く外れていた。まあ言い訳させてもらうなら、2話で手掛かりが全部出揃ったのかと思っていたが、日記を拾ったのは平井太郎という新キャラクターだったなど、新たな手掛かりが次々と出てきたから、この解決を予想できる人はまずいないのではと思う。

個人的に、利き手の違いが推理の決め手になるようなミステリーはあまり好きではない。私は右利きだが、マッチを左で擦ることも普通にあるし、確固たる推理にならないからだ。また、お滝が左利きだからといって、自分の喉に短刀を刺すとき、右から刺すと言い切って本当にいいだろうか。普通に左から刺してもおかしくないと思う。

一つの事件に対して、いくつもの説が出てくるのは『毒入りチョコレート事件』のような多重解決ものを意識したのではないかと思う。推理をぶつけ合う趣向は私は好きなのだが、吉井の説は実質的には自殺説なので、ほぼそれが正解に近いんじゃないかと思った。説を多様にするために、取ってつけたように猫が出てきた感があった。

江戸川乱歩と芥川龍之介

作中に出てきた平井太郎は江戸川乱歩の本名。石川啄木に渡された硬貨が、彼のデビュー作である『二銭銅貨』のきっかけになったという趣向がされている。『二銭銅貨』は暗号もののミステリーで、特に今回の話には内容は関係ないし、デビューのきっかけも史実とは異なる。

芥川龍之介も登場した。真相は藪の中とだけ言う変なキャラクターだが、『藪の中』は芥川龍之介の小説の名前である。内容も、この作中のストーリーに似ていて、いろんな人が矛盾した発言をし合って、真相が全くわからないという話である。こういう文学の小ネタは楽しい

それにしても、石川啄木の性格がどうも好きになれない。いくら京助に腹が立ったからって、嘘の証言をして陥れるのはおかしいし、必要以上に偉そうでイライラしてしまう。

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