『啄木鳥探偵處』第4話「高塔奇譚」感想です。
前回あらすじ
女郎のお滝が被害者となった華ノ屋事件に対して、吉井勇が事故死説、野村胡堂が啄木京助共犯説、などを提唱するが、啄木に一蹴されてしまう。そこに平井太郎が現れる。彼は、啄木を尾行して、彼のローマ字日記を盗み読んでいた。そこには、お滝が偶然見かけた京助を愛して上京してきたことが書かれており、その夢が叶わずお滝が自殺したと太郎は結論づけた。啄木は、それが正しいことを認め、お滝の夢を蔑ろにした京助が許せなかったのだと告白した。
4話あらすじ
啄木は、浅草を牛耳る澤山六郎に、浅草凌雲閣の12階に出現する幽霊の謎を解いてくれと依頼を受ける。実際に凌雲閣を訪れると、着物姿の女性の姿が現れ、すぐに消えるという現象を目撃した。
その凌雲閣では、山岡という啄木の旧友に出逢う。彼は毎朝新聞に勤めていたが、現在は仕事を辞め、凌雲閣そばに暮らしているという。啄木は幽霊騒ぎをずっと報じていたのが毎朝新聞だったという事実から、山岡が幽霊騒ぎの発端で、幽霊は幻灯を使って出現させているのではと推理する。
そんなある日、幻灯師・小磯松吉が殺される。彼の左手には新聞記事が握り締められており、そこには着物姿の女性が殺害された事件の第一発見者が松吉で、被害者は「のどのつき」というダイイングメッセージを残していたと書かれていた。
このことから、啄木は六郎が犯人だと推理。六郎を誘き出し、誘導尋問によって彼が犯人だという自白を引き出した。そこに山岡が現れる。彼は恋人だった女を亡き者にした犯人への復讐を望んでおり、自分もろとも六郎を凌雲閣の12階から突き落とした。
今回はダイイングメッセージもの
前回が多重解決ものなら今回はダイイングメッセージものとも言えるだろうか。とはいえ「のどのつき」が「喉の突き痕」だと言うのは少し安直すぎる気もするが、死の間際にそんな複雑な暗号なんか考えている暇ないだろというツッコミももっともなので、良いように言えばリアリティーがある。
ただ「のど」という単語が「喉」くらいしか思いつかないし、六郎はずっと首を隠しているから彼が犯人なのはすぐに分かってしまうので、もう少し捻ってほしかった。また六郎を追い詰めるシーンでも、犯人しか知らないことを誘導尋問によって言わせるのは、あんまり好きな追い詰め方じゃないなあ。やっぱり探偵なら論理で追い詰めて欲しい。
今回の舞台は浅草凌雲閣だった。明治時代の12階建ての建造物で、明治時代を舞台にした様々な創作物に登場したり、舞台になったりしている。ミステリー(と言っていいか微妙だが)で凌雲閣が出るものと言えば、最も有名なのは江戸川乱歩(前回『啄木鳥探偵處』にも平井太郎として登場)の『押絵と旅する男』だと思う。そちらも物語が恋愛に絡んでいて、幻想的な雰囲気も、凌雲閣に幽霊が出現するという今回の話に何か通じるものがあるような気がした。
また山岡とその恋人とのエピソードがほとんど語られなかったのも逆に良かったと思う。言葉で語るよりも明瞭に、復讐のために自分の命も投げ捨てるという行動で、その愛の深さを推し量ることができた。
幻灯師というのは、今でいうようなプロジェクターを使って映像を投影して、映像に合わせて語って楽しませる興行師のこと。幽霊のような像を凌雲閣に投影するのは、プロジェクションマッピングのようだ。当時の機械でそこまでのことができたかは分からないが。
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