『啄木鳥探偵處』第7話「紳士盗賊」感想です。
前回あらすじ
役者の橘屋乙次郎が殺された。彼の上には金銀花という人形が折り重なっていて、人形の犯行と話題になった。容疑者として逮捕されたのは季久の婚約者の結城扇雀だった。扇雀は自白もしているのだが、季久に扇雀の冤罪を晴らしてくれと頼まれる。啄木はある事実から、季久が真犯人であると推理した。扇雀は季久をかばっていたのだ。季久は口封じしようと襲い掛かるも、京助の機転でことなきを得た。季久は逮捕されるが、勇は季久と扇雀の愛情の深さに感銘を受けるのだった。
7話あらすじ
朝日新聞の記者を騙る男が、ある会社から五千円を盗み出した。彼は紳士盗賊と呼ばれ、世間の耳目を集めたが、フィガロという珍しい煙草の銘柄を手掛かりに、警察の地道な捜査で犯人は逮捕された。
ところが、犯人は五千円の在処を頑として言わず、会社は発見者に五百円の懸賞金を出した。京助は啄木の受け取ったフィガロを購入した本郷菊坂町のマルミヤの釣銭の二銭銅貨の縁切れ目が入っているのを発見する。銅貨の中には暗号の書かれた紙が入っていた。
京助は平井太郎の助けを借り、暗号を解読。タバコ屋の娘が牢屋に差し入れをする差入屋に嫁いだことなどから、暗号は盗んだ金の在処を教えるためのものではないかと考えた。
実際に暗号の指し示す場所に行ってみると五千円を発見。ところが、その紙幣はよく見ると偽札であった。実はすべては啄木が仕組んだ悪戯だったのだ。
『二銭銅貨』の丸パクリ
今回のストーリーは江戸川乱歩(平井太郎)のデビュー作である『二銭銅貨』の丸パクリである。紳士盗賊という名前や、金が盗まれた手法、二銭銅貨に隠された暗号、悪戯だったという結末、最初から最後までまんま『二銭銅貨』である。異なるのは暗号の中身くらいだろうか。しかし暗号は、作中で平井太郎が指摘した通りレベルの低いもので、原作の『二銭銅貨』とは比べ物にならない。青空文庫で読めるので是非比較してみてほしい。
たぶん制作陣はオマージュのつもりでこのストーリーを作ったのだと思うが、個人的には問題だと思う。このアニメがオリジナルアニメだったんならまだしも、一応『啄木鳥探偵處』という原作があるのに、そのアニメ化作品で『二銭銅貨』の丸パクリをやられたら、あたかも原作が江戸川乱歩をパクったかのように思われかねない。もちろん原作小説にはこんなエピソードはない。
著作権的にはすでに切れているので、丸パクリだからと言って法的な問題にはならない。しかしこれはモラルの問題で、原作者の許可が得られているのなら別に構わないが、そうでなかったら原作者の名誉に関わる行為だと思う。アニメ業界は、最近でも『星合の空』のダンストレース事件など、パクリが横行するモラルの低い業界だが、流石にこれは原作者の許可を取っていると思いたい。
また、ストーリー的にも破綻があって、平井太郎は華ノ屋事件の後に二銭銅貨からインスピレーションを得て『二銭銅貨』を書いたことになっていたのに、今回の物語からもインスピレーションを得て『二銭銅貨』を書いたことになっている。前者は原作にも存在するエピソードで、後者を追加したために矛盾が発生したのだろうが、監督がしっかり全体を把握していればこんなミスは犯さないのではないか。
今回はお風呂シーンがあった。私は男性でヘテロセクシャルなので、男のお風呂シーンに歓喜することは全くないが、そのシーンで背中を流す男がいたのは興味深かった。これは三助という銭湯での様々なサービスを仕事にする職業で、つい最近まで実在した職業である。なお三助は男性が担当するが、女性に対してもサービスを行なっていた。イケメンの三助はモテたらしい。
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