『啄木鳥探偵處』第9話「仕遂げしこと」感想です。
前回あらすじ
啄木は医師の宣告を受けて塞ぎ込んでしまった。自殺すら考えていたところに、依頼主の園部環がやってきた。環は蝙蝠人間と呼ばれた軽業師の鑑武実と懇意だったが、鑑は興行中の事故で死んでしまった。興行主で環の夫の三郎を告発する手紙が発見され、犯人として逮捕されたが、証拠不十分により釈放。ところが、鑑の弟を名乗る人物から三郎と環に復讐するという脅迫状が送られてきた。啄木と環は園部と弟が住んでいた家を訪ね、ボタンが取れた弟のシャツを発見。さらに弟とみられる男が窓から逃走するのを目撃する。その数日後、環のもとに彼女の行動が子細に渡るまで書かれた脅迫状が届いた。
9話あらすじ
環が何者かに監視されている恐れから、屋根裏を捜索することになった。屋根裏には何者かが侵入した跡があり、さらに弟のシャツのボタンを発見した。
三郎は慈善事業を隠れ蓑にして子供の売買に手を染めて金稼ぎを行なっていると環は啄木に告白した。啄木は環に対する恋心から社会問題に興味を持ち、蔵書を売ってまで教会に寄付するようにまでなった。
弟の捜索が行き詰まりつつあったとき、平井太郎から鑑の家に幽霊騒ぎがあったと告げられる。実際に鑑の家を捜索すると、物乞いを発見した。物乞いは鑑の死の直後から家に住み始めていた。物乞いはその時点でボタンの取れたシャツが存在しているのを確認していた。つまり鑑の死の前にボタンが屋根裏に置かれていたことを意味していた。
そんな中、三郎が川に転落させられるという事件が起こる。環は弟の犯行だと証言したが、啄木は環のシャツのボタンの矛盾から虚言であると見抜き、三郎を前もって救出させ、真の犯人は環であると指摘した。
鑑の事件は三郎を告発するための自殺であった。荒川財閥殺人事件や内本汽船女中殺人の告発状も環の仕業だった。環は悪が社会に蔓延るのが許せなかったのだ。彼女は三郎を道連れにしようと襲いかかるが、逆に返り討ちに遭ってしまう。彼女が最期に呟いた言葉は啄木の歌だった。
蝙蝠人間事件の解決
前回の感想で予想した通り、環の自作自演だった。鑑の事件に関しての動機は三郎の悪事を告発し逮捕させることで、自作自演の目的は存在しない鑑の弟に三郎殺しの罪を擦りつけるためということになるのだろうか。でもこの自作自演の脅迫状、エンドロールに「参考」として書いてあるように、江戸川乱歩の『陰獣』とプロットはよく似ている。
しかし少し気になる部分がある。啄木はシャツのボタンが屋根裏に置かれたのは鑑が死亡する前と言っていたが、物乞いが住み着いたのは警察の捜査が終わった後なのだから、事件発生後から物乞いが住み着くまでにある程度時間があったはずで、これだけで死亡する前だとは断定できないのではないか。それよりも鑑の弟は三郎に対して脅迫状を出したことになっているから「三郎が不起訴になる前にボタンが置かれたのは不自然」という推論の方が正確だと思う。結論自体は、環の自作自演ということで変わりがない。
最後に環が命を落とす結末になったが、これは啄木が三郎を救出したから起きたとも言える。探偵が介入したことによって間接的に事件が発生して、しかもそれが愛した女性の死に繋がっているのだから悲劇的だ。これが原因で探偵のような行動はやめる、というのかなと思ったけど、次回予告を見る限りそんな感じはなさそう。
一方で、環からしてみれば自分が無罪になるために啄木を利用していたのだから、環が啄木に好意があるように見せていたのも演技ということになる。啄木にとってはショックだろう。鑑に対して身体を許したことも、鑑が好きだからではなく三郎に対する復讐のためとも考えられるだから、環は傑物だと改めて感じた。
はっきり言って、啄木よりも平井太郎の方がよっぽど探偵っぽい活躍をしているような気がする。実は平井太郎は安楽椅子探偵のように、話を聞くだけで大体の事件の粗筋が分かって、真犯人も知っていたのではないかとすら思う。まあ啄木よりも乱歩の方が探偵には相応しいのかもしれないけど。そもそもやっぱり啄木のキャラクターが好きになれないんだよなあ。平井少年の方が可愛げがあるし。このアニメは女性向けだと思うけど、女性は啄木に対して好意的に見られるのかは気になる。
今までの荒川財閥殺人事件や内本汽船女中殺人の告発状も環の仕業だったということになり、連作短編風の趣のある締め方だった。これが最終話でもと思ったけど、当然まだ続く。今回はエンディングがアップテンポになる前で終わっていて良かった。
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