『キャロル&チューズデイ(キャロチュー)』第24話(最終回)「A Change is Gonna Come」感想です。サブタイトルはサム・クックが1964年にリリースした楽曲。
前回あらすじ
スキップが公務執行妨害で逮捕された。彼は表現規制反対の曲を歌ったための政府による国策逮捕だった。キャロル&チューズデイは音楽の表現の自由が脅かされていると考えて、火星中のアーティストでライブパフォーマンスを開くことを提案する。アーティガン達はそれに乗り、様々なアーティストへ声をかけて回った。2人はアンジェラにも参加してほしいと願い、彼女の元を訪ねる。アンジェラは順調に回復しつつあったが、塞ぎ込んでしまっていた。もう歌えないと言う彼女の元にやってきたのはタオだった。
24話あらすじ
タオとアンジェラはデザイナーズチャイルドだった。アンジェラは自分もタオと一緒に行きたいと懇願するが、タオは追われる身であり、アンジェラに自分の歌を歌うように告げて去っていった。
スペンサーはヴァレリーに、テロ事件を主導したのはジェリーであると告げた。ヴァレリーはそれを受け入れ、大統領選を辞退することを決定する。
1月1日午前0時。火星中のアーティストによるゲリラライブが始まった。クリスタルやフローラ、ピョートルやGGK、デズモンドなど多数のアーティストが集まり『Mother』を歌い上げた。
その場にはアンジェラもいた。彼女は自身の過去を克服し、本当の自分へと一歩踏み出す。そのライブの模様は、世界中に配信され、世界中の人々の気持ちを変化させていった。これはのちに奇跡の7分間と呼ばれることになる。
奇跡の7分間
毎回アバンでハードルをこれでもかこれでもかと上げに上げまくった奇跡の7分間みなさんはどうでしたか。Twitterなどを観ると感動したと言っている方が多いように思うのだけど、5chを観ると割とボロクソに貶されたりもするので、賛否両論といった感じだろうか。
現実世界における『We are the World』と同じく、有名アーティストがひとつの歌を歌うという王道展開だった。それはそれとしていいのだけど、その歌がこれで本当に人々の気持ちが変わるのか?と少し疑問符だった。『We are the World』や『Imagine』など強烈なメッセージ性があるわけでもなく、歌詞もキャロル&チューズデイやアンジェラの過去を知らない人達からすれば、ぼんやりしたものになっていたのではないか。
半年間見続けた視聴者からはアンジェラやチューズデイの過去と歌詞がリンクしているなということは感じられるのだが、彼らを知らない人があの歌を聴いて感銘を受けるだろうか。まあマザーには母なる地球という意味があることを斟酌できれば分からんでもないが「火を付けて」という歌詞は逆効果じゃないかと思った(アンジェラの『light a fire』を意識してると思うのだが)。
また、この奇跡の7分間の後日談が描かれていない。ヴァレリーが歌を聴いて改心したわけでもない。結局歌じゃなくて、ペン(ジャーナリズム)がヴァレリーや世論を動かしたように取られかねない。またそのヴァレリーも完全な悪者ではないので、チューズデイが「自分を縛る鎖を解き放って」と歌っても、なんだか上辺だけに感じてしまう。そういうのが積み重なって否定的な感想を持つ人も多いのではないか。
製作陣からするとアーティストを集めたり多分この最後のシーンを撮るために東奔西走したのだと思う。その苦労もあって、「奇跡」とハードルを上げまくったのだと思うが、正直言って製作の苦労は視聴者にはあんまり関係がない。ハードルが上がってなければ、これでいい最終回だなと思えたのだろうが、もっと凄いものを「奇跡」という言葉から想像していたので、そこは超えられなかったかな。
『キャロル&チューズデイ』総評
まず楽曲が良かった。Netflixの潤沢な資金のおかげか楽曲の完成度から言えば、他のアニメの追随を許さないだろう。ストーリーがおまけで楽曲がメインだと言ってもいい。ただ私の一番好きな曲は劇中挿入歌ではなく、1クール目エンディングの『Hold Me Now』なのだが。
次にキャラクターが良かったと思う。前向きで健気なキャロルと箱入り娘で天然なチューズデイ、そして強気だが素直になれないアンジェラとみんな愛らしかった。サブキャラクターもキャラが立っていた。個人的にはロディがいちいち仕草が可愛くて好きだった。
気になるのはやはりストーリーで、最初はAIの作る音楽と人間が作る音楽の違いをテーマにしていたが、それに答えを出すことのないまま、次は移民問題が出現してきた。その移民問題も解決したのかどうかわからないまま、最後は表現の自由の問題へと変化していった。
たぶん移民問題のような政治的話題をメインでやりたくて、2クールという枠を埋めるためにAIやSF的なガジェットを追加していったのだと勝手に想像しているが、政治的話題をやりたいならそれをガッツリと2クールやるべきだっただと思う。
最初は割とコミカルな話が続いていたのに、後半いきなり政治が入ってきて拒否反応を起こした人もいるのではないか。最初から軸をブレずにやっていれば、人は選ぶかもしれないが、途中でガッカリする人も減ったはずだ。
まあたぶん『キャロル&チューズデイ』のメインターゲットは海外だと思う。海外の人はどのような感想を抱くのだろうか。特にアメリカは、完全に舞台背景が被っているので、反応が気になるところだ。
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